青検 - 薄田泣菫

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薄田泣菫. 一. 郷里にゐる弟のところから、粗末な竹籠の小荷物が、押潰されたやうになつたまま送りとどけられて来た。 その途端、鼻を刺すやうな激しい臭みが、籠の目を洩れて、そこらにぷんぷんと散ばつて往つた。 それを嗅ぎつける ...
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黒猫. 薄田泣菫 「奥さん、謝れなら謝りまんが、それぢやお宅の飼猫だすかいな、これ」 荷車曳(ひ)きの爺さんは、薄ぎたない手拭(てぬぐひ)で、額の汗を拭(ふ)き拭き、かう言つて、前に立つた婦人の顔を敵意のある眼で見返しました。 ...
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山雀. 薄田泣菫. 一. 私の近くにアメリカ帰りの老紳士が住んでをります。 その人が今年の春六甲山へ登つて、その帰りにあたりの松林で小鳥の巣を見つけました。 巣にはやつと羽が生えかけたばかしの雛(ひな)が四羽をりました。 雛 ...
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旋風. 薄田泣菫 ... それに朝夙くから午過ぎの今時分まで何一つ口へ入れるではなし、矢鱈に歩き通しに歩いたので、腹が空いて力が無くなるし、 ... 底本の親本:「薄田泣菫全集 第八巻」創元社. 1939(昭和14)年刊行. 初出:「新小説」 ...
Wikipedia: 薄田泣菫
石竹. 薄田泣菫. この頃咲く花に石竹(せきちく)があります。 照り続きで、どんなに乾いた磧(かはら)にも、山道にも、平気で咲いてゐるのはこの花です。 茎が折れると、折れたままにその次の節からまた姿勢を持ちなほして、伸びてゆくのはこの花です。 ...
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価. 薄田泣菫. 大阪に大国柏斎といふ釜師の老人が居る。 若い彫塑家大国貞蔵氏の父で、釜師としての伎倆は、まづ当代独歩といつて差支へあるまい。 伎倆のすぐれてゐる割合に、その名前があまり世間に聞えてゐないのを惜しがつた知合の誰彼が、 ...
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茶立虫. 薄田泣菫. 静かな秋の一日、午後三時頃の事でした。 家の者はみな遊びに出かけたので、留守居に残された私は部屋に坐つたまま、背を壁にもたせて、何を考へるでもなし、ひとりつくねんとしてゐました。 煤けた壁の落ちつき ...
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名文句. 薄田泣菫. 米国のボストンにペン先の製造業者がある。 数多い同業者を圧倒して、店のペン先を売り弘めようとするには、何でも広告を利用する外には良い方法が無かつた。 ... 底本の親本:「薄田泣菫全集 第三巻」創元社. 1938(昭和13) ...
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贋物. 薄田泣菫. 村井吉兵衛(きちべゑ)が伊達家の入札で幾万円とかの骨董物を買込んだといふ噂を伝へ聞いた男が、 「幾ら名器だつて何万円は高過ぎよう。 それにそんな物を唯(たつた)一つ買つたところで、他(ほか)の持合せと調和が出来なからうぢやないか。 ...
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初蛙. 薄田泣菫. 一. 古沼の水もぬるみ、蛙もそろそろ鳴き出す頃となりました。 月がおぽろに、燻し銀のように沈んだ春の真夜なか時、静かな若葉の木かげに立ちながら、あてもなくじっと傾ける耳に伝わる仄かなおとずれ—— 「くる.くる.くる. ...
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