青検 - 島崎藤村
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新生. 島崎藤村 [#改丁、ページの左右中央] 序の章 [#改ページ] 一 「岸本君――僕は僕の近来の生活と思想の断片を君に書いて送ろうと思う。 然(しか)し実を言えば何も書く材料は無いのである。 黙していて済むことである。 ...
破戒. 島崎藤村. この書の世に出づるにいたりたるは、函館にある秦慶治氏、及び信濃にある神津猛氏のたまものなり。 労作終るの日にあたりて、このものがたりを二人の恩人のまへにさゝぐ。 第壱章 (一) 蓮華寺(れんげじ)では下宿を兼ねた。 ...
若菜集. 島崎藤村. こゝろなきうたのしらべは. ひとふさのぶだうのごとし. なさけあるてにもつまれて. あたゝかきさけとなるらむ. ぶだうだなふかくかゝれる. むらさきのそれにあらねど. こゝろあるひとのなさけに. かげにおくふさのみつよつ ...
嵐. 島崎藤村. 子供らは古い時計のかかった茶の間に集まって、そこにある柱のそばへ各自の背丈(せたけ)を比べに行った。 次郎の背(せい)の高くなったのにも驚く。 家じゅうで、いちばん高い、あの子の頭はもう一寸四分(ぶ)ぐらいで鴨居(かもい) ...
藤村詩抄. 島崎藤村自選. 島崎藤村. 自序. 若菜集、一葉舟、夏草、落梅集の四卷. をまとめて合本の詩集をつくりし時に. 遂に、新しき詩歌の時は來りぬ。 そはうつくしき曙のごとくなりき。 あるものは古の預言者の如く叫び、 ...
島崎藤村. 佛蘭西の旅に行く時、私は鞄の中に芭蕉全集を納(い)れて持つて行つた。 異郷の客舍にある間もよく取出して讀んで見た。 『冬の日』、『春の日』から、『曠野』、『猿簑』を經て『炭俵』にまで到達した芭蕉の詩の境地を想像するのも樂しいことに思つた。 ...
刺繍. 島崎藤村. ふと大塚さんは眼が覚めた。 やがて夜が明ける頃だ。 部屋に横たわりながら、聞くと、雨戸へ来る雨の音がする。 いかにも春先の根岸辺の空を通り過ぎるような雨だ。 その音で、大塚さんは起されたのだ。 寝床の ...
秋草. 島崎藤村. 過日、わたしはもののはじに、ことしの夏のことを書き添えるつもりで、思わずいろいろなことを書き、親戚から送って貰った桃の葉で僅かに汗疹(あせも)を凌いだこと、遅くまで戸も閉められない眠りがたい夜の多かったこと、 ...
並木. 島崎藤村. 近頃相川の怠(なまけ)ることは会社内でも評判に成っている。 一度弁当を腰に着けると、八年や九年位提(さ)げているのは造作も無い。 齷齪(あくせく)とした生涯(しょうがい)を塵埃(ほこり)深い巷(ちまた)に送っているうちに、最早(もう) ...
ふるさと. 島崎藤村. はしがき. 父(とう)さんが遠(とほ)い外國(ぐわいこく)の方(はう)から歸(かへ)つた時(とき)、太郎(たらう)や次郎(じらう)への土産話(みやげばなし)にと思(おも)ひまして、いろ/\な旅(たび)の ...
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