青検 - 岡本かの子
Yahoo!経由で「青空文庫」を検索します。
Search Result from 1.
岡本かの子. 東京の下町と山の手の境い目といったような、ひどく坂や 崖 ( がけ ) の 多い街がある。 表通りの繁華から折れ曲って来たものには、別天地の感じを与える。 つまり表通りや新道路の繁華な 刺戟 ( しげき ) に疲れた人々が、時々、刺戟を 外 ( は ...
岡本かの子. 山の手の高台で電車の交叉点になっている十字路がある。十字路の間 からまた一筋細く 岐 ( わか ) れ出て下町への谷に向く坂道がある。坂道の途中に 八幡宮の 境内 ( けいだい ) と向い合って名物のどじょう店がある。拭き磨いた千本格子 の真中 ...
岡本かの子. この人のうえをおもうときにおもわず力が入る。この人とのくらしに必要な わずらわしき日常生活もいやな交際も 覚束 ( おぼつか ) なきままにやってのけようと おもう。この人のためにはすこしの恥は涙を隠しても忍ぼうとおもう。 朝夕見なれしこの 人、 ...
岡本かの子. 早春を脱け切らない寒さが、思ひの外にまだ肩や肘を掠める。しかし、宵の 小座敷で燈に向つてゐると、夜のけはひは既に朧である。うるめる物音、物影。 「日本的 なるもの」の一つに「朧」がある。よし、それが淨土教の影響によるにもせよ、老莊道學 ...
岡本かの子. 桜ばないのち一ぱいに咲くからに 生命 ( いのち ) をかけてわが 眺 ( なが ) めたり さくら 花 ( ばな ) 咲きに咲きたり 諸立 ( もろだ ) ちの 棕梠 ( しゆろ ) 春光 ( し ゆんくわう ) にかがやくかたへ この山の 樹樹 ( きぎ ) のことごと芽ぐみたり桜の ...
岡本かの子. 文化三年の春、全く孤独になつた七十三の 翁 ( おきな ) 、上田秋成は 京都南禅寺内の元の 庵居 ( あんきょ ) の跡に間に合せの小庵を作つて、老残の身を 投げ込んだ。 孤独と云つても、このくらゐ徹底した孤独はなかつた。七年前三十八年 連れ添 ...
岡本かの子. 菊萵苣 ( きくぢさ ) と和名はついているが、原名のアンディーヴと呼ぶ方が 食通の間には通りがよいようである。その 蔬菜 ( そさい ) が姉娘のお千代の手で 水洗いされ 笊 ( ざる ) で水を切って部屋のまん中の 台俎板 ( だいまないた ) の上に置 かれ ...
岡本かの子. お別れしてから、あの煙草屋の角のポストの処まで、無我夢中で私が走 つたのを御存じですか。あれはあなたにお別れしたくない心が、一種の反動作用を、私の 行為の上に現はしましたの。それから私、走りながらも夢中の夢のやうに考へましたこと ...
岡本かの子. 巴里の北の停車場でおまえと 訣 ( わか ) れてから、もう六年目になる。人 は久しい歳月という。だが、私には永いのだか短いのだか 判 ( わか ) らない。あまりに 日夜 ( にちや ) 思い続ける私とおまえとの間には 最早 ( もは ) や直通の心の橋が ...
岡本かの子. 恋愛は詩、ロマンチツクな詩、しかも決して非現実的な詩ではないので あります。恋愛にも種々あります、幼時の初恋、青年期中年期の恋、その何れもが大 部分自分の意識する処は、詩的感激、ロマンチツクな精神慾ではありますが、意識 無意識に ...
1
2
3
4
5
6
7
8
9
10
>>