青検 - 大阪圭吉
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石塀幽霊. 大阪圭吉. 一. 秋森(あきもり)家というのは、吉田雄太郎(よしだゆうたろう)君のいるN町のアパートのすぐ西隣にある相当に宏(ひろ)い南向きの屋敷であるが、それは随分と古めかしいもので処まんだらにウメノキゴケの生えた ...
灯台鬼. 大阪圭吉. 一. わたし達の勤めている臨海試験所のちょうど真向いに見える汐巻(しおまき)灯台の灯が、なんの音沙汰(おとさた)もなく突然吹き消すように消えてしまったのは、空気のドンヨリとねばった、北太平洋名物の紗幕(ヴェール) ...
銀座幽霊. 大阪圭吉. 一. みち幅三間(げん)とない横町の両側には、いろとりどりの店々が虹のように軒をつらねて、銀座裏の明るい一団を形づくっていた。 青いネオンで「カフェ・青蘭(せいらん)」と書かれた、裏露路にしてはか ...
坑鬼. 大阪圭吉. 一. 室生岬の尖端、荒れ果てた灰色の山の中に、かなり前から稼行を続けていた中越(ちゅうえつ)炭礦会社の滝口坑は、ここ二、三年来めきめき活況を見せて、五百尺の地底に繰り拡ろげられた黒い触手の先端は、もう海の底半哩(マイル)の沖にまで達していた。 ...
花束の虫. 大阪圭吉. 一. 岸田直介(きしだなおすけ)が奇怪な死を遂げたとの急報に接した弁護士の大月対次(おおつきたいじ)は、恰度(ちょうど)忙しい事務もひと息ついた形だったので、歳若いながらも仕事に掛けては実直な秘書の秋田 ...
カンカン虫殺人事件. 大阪圭吉. K造船工場の第二号乾船渠(ドライ・ドック)に勤めている原田喜三郎と山田源之助の二人が行方不明になってから五日目の朝の事である。 失踪者の一人(にん)、原田喜三郎の惨殺屍体(したい)が、造船 ...
デパートの絞刑吏. 大阪圭吉. 多分独逸(ドイツ)物であったと思うが、或る映画の試写会で、青山喬介(あおやまきょうすけ)――と知り合いになってから、二カ月程後の事である。 早朝五時半。 社からの電話を受けた私は、喬介と一緒 ...
寒の夜晴れ. 大阪圭吉. また雪の季節がやって来た。 雪というと、すぐに私は、可哀そうな浅見三四郎(あさみさんしろう)のことを思い出す。 その頃私は、ずっと北の国の或る町の――仮にH市と呼んでおこう――そのH市の県立女学校で、平凡な国語の教師を勤めていた。 ...
幽霊妻. 大阪圭吉. ――じゃァひとつ、すっかり初めっから申し上げましょう.いや全く、私もこの歳(とし)になるまで、ずいぶん変わった世間も見てきましたが、こんな恐ろしい目に出会ったのは天にも地にも、これが生まれて初めてなんでして. ...
香水紳士. 大阪圭吉. 一. 品川(しながわ)の駅で、すぐ前の席へ、その無遠慮(ぶえんりょ)なお客さんが乗り込んで来ると、クルミさんは、すっかり元気をなくしてしまった。 「今日は、日本晴れですから、国府津(こうづ)の叔母 ...
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