青検 - 夏目漱石
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草枕. 夏目漱石. 一. 山路(やまみち)を登りながら、こう考えた。 智(ち)に働けば角(かど)が立つ。 情(じょう)に棹(さお)させば流される。 意地を通(とお)せば窮屈(きゅうくつ)だ。 とかくに人の世は住みにくい。 住み ...
こころ. 夏目漱石. 上 先生と私. 一. 私(わたくし)はその人を常に先生と呼んでいた。 だからここでもただ先生と書くだけで本名は打ち明けない。 これは世間を憚(はば)かる遠慮というよりも、その方が私にとって自然だからである。 ...
夢十夜. 夏目漱石. 第一夜. こんな夢を見た。 ... 底本:「夏目漱石全集10巻」ちくま文庫、筑摩書房. 1988(昭和63)年7月26日第1刷発行 ... 底本の親本:「筑摩全集類聚版夏目漱石全集」筑摩書房. 1971 ...
夏目漱石. 一. うとうととして目がさめると女はいつのまにか、隣のじいさんと話を始めている。 このじいさんはたしかに前の前の駅から乗ったいなか者である。 発車まぎわに頓狂(とんきょう)な声を出して駆け込んで来て、いきなり ...
坊っちゃん. 夏目漱石. 一. 親譲(おやゆず)りの無鉄砲(むてっぽう)で小供の時から損ばかりしている。 小学校に居る時分学校の二階から飛び降りて一週間ほど腰(こし)を抜(ぬ)かした事がある。 なぜそんな無闇(むやみ)をしたと聞く人があるかも知れぬ。 ...
門. 夏目漱石. 一. 宗助(そうすけ)は先刻(さっき)から縁側(えんがわ)へ坐蒲団(ざぶとん)を持ち出して、日当りの好さそうな所へ気楽に胡坐(あぐら)をかいて見たが、やがて手に持っている雑誌を放り出すと共に、ごろりと横になった。 ...
夏目漱石. さっきから松原を通ってるんだが、松原と云うものは絵で見たよりもよっぽど長いもんだ。 いつまで行っても松ばかり生(は)えていていっこう要領を得ない。 こっちがいくら歩行(あるい)たって松の方で発展してくれなければ駄目な事だ。 ...
道草. 夏目漱石. 一. 健三(けんぞう)が遠い所から帰って来て駒込(こまごめ)の奥に世帯(しょたい)を持ったのは東京を出てから何年目になるだろう。 彼は故郷の土を踏む珍らしさのうちに一種の淋(さび)し味(み)さえ感じた。 ...
野分. 夏目漱石. 一. 白井道也(しらいどうや)は文学者である。 八年前(まえ)大学を卒業してから田舎(いなか)の中学を二三箇所(かしょ)流して歩いた末、去年の春飄然(ひょうぜん)と東京へ戻って来た。 流すとは門附(かど ...
趣味の遺伝. 夏目漱石. 一. 陽気のせいで神も気違(きちがい)になる。 「人を屠(ほふ)りて餓(う)えたる犬を救え」と雲の裡(うち)より叫ぶ声が、逆(さか)しまに日本海を撼(うご)かして満洲の果まで響き渡った時、日人と ...
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