青検 - 南部修太郎
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疑惑. 南部修太郎. ——水野敬三より妻の藤子に宛てた手記.—— 昨日、宵の内から降り出したしめやかな秋雨が、今日も硝子戸の外にけぶつてゐる。 F——川の川音も高い。 町を挾んだ丘の斜面の黄ばんだ木の葉の色も急に濃くなつたやうだ。 ...
猫又先生. 南部修太郎. 高橋順介、それが猫又先生の本名である。 先生はT中學校の國語並に國文法の先生で、私達が四年級に進んだ年の四月に新任されたのである。 ... 而(しか)も、當然私達の擔任たるべく期待されてゐた歴史の杉山先生が、 ...
ハルピンの一夜. 南部修太郎 ... 中年のフランス人、何れも其處の常連だと云ふ、何處となく下等な身成をした、一癖ありげな顏附の男達の十餘人と、それを彩(いろど)る酒塲(カバレエ)稼ぎのロシヤ人の賣笑婦達——壁際のテエブルのま ...
阿片の味. 南部修太郎 ... とにかくその色欲の享樂と云ふ點で古來支那人ほど工夫を凝らし頭をひねつた物はないらしい。 ... 一つは何にでも徹底的な性情のせゐもあらう。 見方によれば支那人は色欲と賭博のために生きてゐる ...
麻雀を語る. 南部修太郎. 1 ... 三ヶ月(げつ)ほどの南北支那(なんぼくしな)の旅(たび)を終(をは)つて、明日(あした)はいよいよ懷(なつか)しい故國(ここく)への船路(ふなぢ)に就(つ)かうといふ前(まへ)の晩(ばん)、それは乳色(ちゝいろ) ...
自分のこと. 南部修太郎. 明治二十五年の秋、仙臺で生れた。 このことは姓と結び合せて自分を宮城縣人と思ふ人もあるらしいが、たゞ生誕の地といふだけで、三ヶ月後には仙臺を去り、それから土木技師である父の轉勤につれて東京・神戸・熊本・博多・長崎と轉住した。 ...
病院の窓. 南部修太郎. 十七の五月だつた。 私は重い膓チブスに罹つて、赤坂の或る病院へ入院した。 ... 何か怖ろしい物に追ひ掛けられてゐるやうな、遁げても遁げても遁げきれないやうな苦しさのする長い夢にあがいてゐた氣持——そんな氣持で、 ...
氣質と文章. 南部修太郎. 1 「文は人なり。 これは高山樗牛の有名な詞である。 が、今は古めかしいこの詞も結局は永遠の眞理である。 言ひ換へると、文章は人格の再現なりといふ事になるが、これをもつと狹い意味に文章は氣質の再現なりとも言へると思ふ。 ...
探偵小説の魅力. 南部修太郎. ある時、Wと云(い)ふ中年の刑事が私にこんな事を話し聞かせた。 ... 然し、その性質如何(いかん)に拘(かゝは)らず、一體(たい)人の犯罪乃至(ないし)は祕密を探し尋ねて、それを白日(はくじつ)にさらし出すと云(い) ...
畫家とセリセリス. 南部修太郎. 1 ... が、家(うち)の門(もん)をはひらない前(まへ)に、彼(かれ)はからつぽになつた財布(さいふ)の中(なか)と妻(つま)の視線(しせん) ... 底本:「新進傑作小説全集14 南部修太郎集・石濱金作集」平凡社 ...
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