青検 - 南部修太郎
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疑惑. 南部修太郎. ——水野敬三より妻の藤子に宛てた手記.—— 昨日、宵の内から降り出したしめやかな秋雨が、今日も硝子戸の外にけぶつてゐる。 ... J——峠から海の方へ展がる山坡に沿うて、雨を含んだ灰色の雲が躍るやうに千切れては飛び、飛んでは千切れて行く。 ...
氣質と文章. 南部修太郎. 1 「文は人なり。 これは高山樗牛の有名な詞である。 が、今は古めかしいこの詞も結局は永遠の眞理である。 言ひ換へると、文章は人格の再現なりといふ事になるが、これをもつと狹い意味に文章は氣質の再現なりとも言へると思ふ。 ...
猫又先生. 南部修太郎. 高橋順介、それが猫又先生の本名である。 先生はT中學校の國語並に國文法の先生で、私達が四年級に進んだ年の四月に新任されたのである。 ... 而(しか)も、當然私達の擔任たるべく期待されてゐた歴史の杉山先生が、 ...
探偵小説の魅力. 南部修太郎. ある時、Wと云(い) ... 然し、その性質如何(いかん)に拘(かゝは)らず、一體(たい)人の犯罪乃至(ないし)は祕密を探し尋ねて、それを白日(はくじつ)にさらし出すと云(い) ... で、自分でも始終心にさう思ひ、 ...
霧の夜に. 南部修太郎. 霧の深い、暖かな晩だつた。 誘はれるやうに家を出たKと私は、乳色に柔かくぼかされた夜の街を何處ともなく彷徨ひ歩いた。 大氣はしつとりと沈んでゐた。 そして、その重みのある肌觸りが私の神經を異樣に昂ぶらせた。 ...
阿片の味. 南部修太郎 ... とにかくその色欲の享樂と云ふ點で古來支那人ほど工夫を凝らし頭をひねつた物はないらしい。 ... 一つは何にでも徹底的な性情のせゐもあらう。 見方によれば支那人は色欲と賭博のために生きてゐる ...
病院の窓. 南部修太郎. 十七の五月だつた。 私は重い膓チブスに罹つて、赤坂の或る病院へ入院した。 ... 何か怖ろしい物に追ひ掛けられてゐるやうな、遁げても遁げても遁げきれないやうな苦しさのする長い夢にあがいてゐた氣持――そんな氣持で、 ...
ハルピンの一夜. 南部修太郎 ... はりに休んでゐた彼等は順順に立ち上つて、それぞれに腕を組み合せながら、強い酒の香と、煙草の烟のむつと立ち罩めた、明りの色の如何にも陰氣くさいホオルの中へ、樂の音に合せて踊の輪を作つて行く。 ...
修道院の秋. 南部修太郎 「好いかよう. ... 港の上にはまだ冷冷とした朝靄が罩め渡つて、雨上りの秋空は憂ひ氣に暗んでゐた。 騷がしい揚錨機(ウインチ)の音、出帆の相圖の笛の響などが、その重く沈んだ朝の空氣を顫はしながら聞える。 ...
一兵卒と銃. 南部修太郎. 霧(きり) ... 丁度(ちやうど)N原(はら)へ出張演習(しゆつちやうえんしふ)の途上(とじやう)のことで、長(なが)い四列(れつ)縱隊(じうたい)を作(つく)つた我我(われわれ)のA歩兵(ほへい) ... 第十四巻(南部修太郎 ...
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